「私、バックパッカーでしたが、なにか?~90年代女パッカーの戯言」6

「シンガポール、ピンクな夜と鉛色の空」

 

大理石の階段をのぼって私たちはその優雅な席に通された。

シンガポールスリングを二つ頼み、乾杯。

つまみの落花生の殻を床に投げ捨てながら、ピンクのカクテルの味に酔いしれる。

彼と私がそんなステキな夜過ごしたのは、シンガポールの最高級ホテル。
そう、ラッフルズホテル。

ついに私は貧乏くさいバックパッカー生活からおさらばしたのだ。
狭くてむさ苦しい安宿なんて泊まってられないぜ。これからは高級ホテルを泊まりあるいて、セレブな旅を楽しむのよ。
うふふ。


んなワケ、あるかいっ!


その朝、頭痛と共に目を覚ました。

ああ、最悪だ。

蒸し暑く、窮屈で、寝れば寝るほど疲れる。だから他に客がいないんだ。
インドネシアからシンガポールに飛んで、とりあえずチェックインした安宿。


私はすぐに他の宿を探しはじめた。
そこで出会ったのが大学を1年休学して旅をしていたT君。
はじめはお互いシンガポール人だと思い込んで英語で話をしていたんだけど、私が地球の歩き方を読んでいるのをみて、あれ、日本人なんだ!と。
じゃ、晩ご飯でも一緒に食べて、シンガポールスリングを飲みに行こう!ってことになったんだ。


フードコートで3ドル50セントのご飯を食べたあと、いざ、ラッフルズホテルのバーへ。
二人とも短パンによれたTシャツという、どの角度からみてもセレブじゃないし、それどころかどう見ても貧乏くさい。

こんなんで入れてもらえるのか?とドキドキして行ったんだけど、意外にすんなり通してもらえちゃってね。若い男女だったっていうのが、お金がないけどがんばって新婚旅行に来た日本人くらいに見られたのかもしれないな。

写真.JPG

シンガポールスリングですでにほろ酔い 気分はプランテーション・オーナーの貴婦人


シンガポールではいくつかやりたいことがあって、その1つがシンガポールスリングをラッフルズホテルで飲むってこと。ニュージーランドで出会った人たちに、シンガポール行くなら絶対行かなくちゃ!って言われたのがきっかけ。
あとはマーライオンを見るってのもあったんだけど、これは10秒で事足りちゃったな。

若気の至りとか、旅の恥は掻き捨てとか、言ったりするけどさ。あの頃の私はもうそれこそ、ゴクツブシどころかケチくさいバックパッカーに成り果てて、このラッフルズホテルでもその本領をメキメキ発揮。


カクテル1杯を大事にチビチビと飲む時間の途中、すっと背筋を伸ばして優雅な足取りでトイレに向かう。手入れの行き届いたその化粧室の安宿とは違う内装や便器の美しさに魅了されながら、贅沢に備え付けられたトイレットペーパーの質の良さを確認するやいなや、さっと1ロールをバックに忍ばせ、何事も無かったように席に戻る。

東南アジアを旅するバックバックパッカーにとっては、トイレットペーパーは必需品。芯を抜いてぺちゃんこにしてバックの中に常備しておかなくちゃいけない。

そんなもの、スーパーで買えること、高くないことなんて分かってるよ。


でもね、こうして高級トイレットペーパーを拝借して、それを旅人仲間に自慢するっていうアホなことをやっちゃうんだよね。いかに上質なトイレットペーパーをゲットしたか、っていうことをシンガポールスリング飲みながら語り合うワケ。笑


シンガポールの空はずっと鉛色だった。
そしてどんよりと重い空気。


インドネシアのカリマンタンでの森林火災の影響で周辺の空はスモークに包まれ、当時はアジア通貨危機もあって、よくよく考えればあの時代の東南アジアって大変だったんだよね。(前々回の記事で、火山と書いたんだけど、正しくは森林火災です。他の情報と混同してました〜、すみません!)
でもそれってバックパッカーにとっては、物価が安いから旅が長くできることでもあったんだな。

私や他のバックパッカーもその恩恵にずいぶんあずかったなって後になって思う。ついでに言えば、そういう大きな出来事の起こっている最中にまさにその地域にいるっていうことは、時代がダイナミックなカタチをもって時間とともに変化していくことを、身にしみて実感していくことになるってことでもある。

だってあのころ、今の東南アジアの姿をまったく想像しなかったものね。

とはいえ私個人的には、ただよう強いエネルギーをビシビシと感じて、通貨危機って言ってもそこで生きているみんなはエネルギッシュだなぁ、って思ってたような気がするな。

さて、この次は国境を越えてジョホールバルからマラッカへ。
マレーシアでは現地の人たちに良くしてもらった思い出がいっぱい。

 

※第一回からは、こちらで読めます。

http://backpackers-link.com/girls/

Japan Backpackers Link 2012年5月28日 11:12 AM
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